2013年12月9日月曜日

海岸線に沿って、筒状の立体が並ぶ。
島で使われなくなった瓦がていねいに積み上げられた構造物。
高さは、人の背丈を超える。



 


「望郷の火」と名付けられた、立体コース卒業生の若林亮さんの作品は、
会期中の毎週末、主を失った廃材を「かがり火」にするプロジェクトだ。
この筒状の立体は、「炉」としての構造をもつ。


午後5時、点火。
炉の底に設けられた穴から空気を送ると、
ゴーッという音をたてながら火柱が上がり始めた。


最終の船が高見島を発つ黄昏時。
船上で「望郷の火」を眺めながら高見を去る人々が、手を振ってくれる。
島に残る若林さん、精華大学のスタッフが、船に向かって手を振り返す。
「また来てねー」
京都の夏の風物詩、五山の送り火を連想させる。
去る人々を見送りながら、再会を願った。




夕闇が深くなるにつれ、火柱も勢いを増してきた。
数十メートル離れていても、熱が伝わってくる。
高見島の夜闇に浮かび上がる眩い光、
静寂に漂う火柱の音と、火の粉の音。
船とともに人の去った島。
夜が更けるまで、輝きと轟きを放出し続ける。