2013年11月11日月曜日

そびえ立つ石垣の上に築かれた「中塚邸」。
屋敷内には、日本画コースの四名の作家による「高見島へのオマージュ」が広がっている。瀬戸内の伝統的な風物や暮らしへの畏怖をテーマとする作品によって、建物全体が空間構成されたインスタレーション作品だ。



まず玄関口で迎えてくれたのが、日本画コース小西通博先生の作品「海、空」。瀬戸内の海と空が、中塚邸の襖に映り込んだよう。とても清々しくて、住人の去った家屋に生まれた新たな息吹を感じる作品。↓
小西通博先生「海、空」


 
玄関から客間をのぞくと、畳の上に並べられた絵画の数々。絵に誘われるままに客間に入る。作品は、日本画コース卒業生の藤野裕美子さんによる「肩の情—高見島—」。高見島に暮らしておられる人々を描いた肖像画だ。一人一人にお願いしてモデルになってもらったと聞く。その時の交流の様子が、淡く柔らかな色彩から滲みだしてくるように思え、さまざまな空想を誘う。↓
藤野裕美子さん「肩の情—高見島—」
     



展示はさらに、二階へと続く。自然光の差し込む一階と比べ、二階はかなり暗そうだ。幅の狭い階段を恐る恐る上ってゆく。上りきったところで待っていたのは、ライトを受けて、暗がりに浮かび上がる暮らしの道具。かつての時間の中に足を踏み入れたかのようでちょっとドキドキ。↓




振り返ると、壁に作品が。描かれた子供の姿に、ほっとする。日本画コース卒業生、河野有希さんの作品「なつかしい声が聞こえる」だ。行き交う鑑賞者の陰が絵画の上で揺らめくのを、ずーっと眺めていたい気持ちになる。一つの絵画の上で、かつての時間と今の時間が交錯するかのような不思議な感覚。↓


河野有希さん「なつかしい声が聞こえる」



奥の襖には、日本画コース卒業生楠本衣里子さんの作品「ナカツカサンニハセル」。小さな窓から差し込む光に浮かび上がる色彩が、なんとも心地よく、温かだった。この小さな窓から、中塚邸インスタレーションのエネルギーが島中に広がるといいな。↓

楠本衣里佳さん「ナカツカサンニハセル」