作品の数々に導かれながらの散策。
階段や坂をのんびりと上っていくうちに、かなりの高台に到達した。
眼下に大きな瀬戸内海が横たわる。
この豊かな瀬戸内海に囲まれた高見島。その暮らしの基盤は、漁業であった。
海を眺めながら、昨日の民宿の夕飯を思い出す。
ホットプレートの上で暴れる大きな蛸。
その姿がショッキングだったので、私の脳裏に強く焼き付いた「高見島の蛸」。
そういえば、海辺には蛸壺が、壁のように積まれていた。
この海には、うじゃじゃと蛸が生息しているのかもしれない。
そんなことを思いつつ、立体コースの吉野央子先生の「蛸の家」へと向かう。
蛸の巣を持つ習性からインスピレーションを得て作られた「蛸の家」
古民家一軒を蛸の住処に見立てたインスタレーションだ。
「蛸の家」に上がった最初の部屋。
木彫の蛸から「まあ、一杯!」との言葉が聞こえてきそうだ。
テーブルにへばりつき、顔を真っ赤にした蛸が、来客をもてなしてくれる。
奥の部屋では、蚊帳の中に横たわる蛸。
蚊帳の裾の青が、眼下に広がる瀬戸内海を思わせる。
縁側から注ぐ柔らかな自然光を浴びながら、
海の夢に漂うお昼寝の蛸。
二階は、かつて倉庫として使われていた空間だ。
床に配置された壷の数々。
よくみると、その一つ一つから、にょろっと蛸が足を見せている。
足先だけをちらっと覗かせる蛸を見ていると、
家の隅々の暗闇から、蛸の足がにょろっと伸びてきそうだ。
その気配に誘われて、
振り向いたり、覗いたり・・・
思わず蛸探しをはじめてしまう「蛸の家」。