高見島での作品展示は、住民の暮らす浦集落を舞台としている。
しかし、この板持廃村再生プロジェクトだけは、
浦集落から2キロほど離れた板持集落でのプロジェクトだ。
人口減少の続く高見島で、
十年前に、板持集落は人の住まない集落となった。
人が去ってから十年経つと、集落はどのようになるのか?
そのような興味から始まったプロジェクトである。
生い茂る草木を刈り取って、板持集落に残る暮らしの痕跡をよみがえらせる。
これが「板持廃村再生プロジェクト」だ。
海岸脇の階段が、板持集落の入り口。
うっそうと茂った草木のトンネルくぐり抜ける。
板持廃村再生プロジェクトを実現するための作業は、専ら草刈りだったと聞く。
人がいなくなった集落は、
道も、家も、石垣も、草木に覆い尽くされていたのだ。
緑に飲み込まれた集落。
植物の繁殖力に圧倒されながらも、
以前は集落内を行き来する小道であった場所の草を刈り、
人が通れる状態となった。
草刈りされた小道は、以前の姿を取り戻したが、
しかし、小道の脇に建つ家々は、
竹や蔦、そして降り積もった枯れ葉に覆われて、もはや全体像が見えない。
木造の家屋は、植物によって浸食され、雨風によって腐食してゆく。
板持集落の頂上に位置する廃屋に到着した。
庭の草が刈り取られ、庭全体と家屋の一部が姿を現している。
人工物を覆い尽くす植物の刈り取りは
遺跡の発掘を連想させる作業であっただろう。
この光景は「過去の遺産」だ。
しかし、島の方の口から出たのは、
ノスタルジーをはるかに超えた、心に刺さり来る言葉であった。
「あそこは島の未来だ」
板持集落の光景が
高見島の未来ではないことを心から願う。